こども

山には躑躅が
さいてゐるから
おつこちるなら
そこだらうと
子どもがいつてる
かみなり
かみなり
躑躅がいいぢやないか

  おなじく

おや、こどもの聲がする
家のこどもの泣聲だよ
ほんとに
あんまり長閑《のどか》なので
どこかとほいとほい
お伽噺の國からでもつたはつてくるやうにきこえる
いい聲だよ、ほんとに

  おなじく

ぼさぼさの
生籬の上である
牡丹でもさいてゐるのかと
おもつたら
まあ、こどもが
わらつてゐたんだよう

  おなじく

千草《ちぐさ》の嘘つきさん
とうちやんの
おくちから
蝶々が
飛んでつた、なんて

  おなじく

とろとろと瞳々《めめ》
とろけかかつたその瞳々
ねむたかろ
子どもよ
さあ林檎だ、林檎だ
まつ赤な奴だぞ

  おなじく

まづしさのなかで
生ひそだつもの
すくすくと
ほんとに筍のやうだ
子どもらばかり

  おなじく

こどもよ、こどもよ
燒けたら宙に放りあげろ
たうもろこしは
風で味よくしてたべろ
風で味つけ
よく噛んでたべろ

  おなじく

まんまろく
まんまろく
どうやら西瓜ほどの大きさである
だが子どもは※[#「口
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