のことである。寂しくともくるしくともそのよい生活を生かすためには、お互ひ、精進々々の事。
[#地から5字上げ]茨城縣イソハマにて
[#地から1字上げ]山村暮鳥
春の河
たつぷりと
春の河は
ながれてゐるのか
ゐないのか
ういてゐる
藁くづのうごくので
それとしられる
おなじく
春の、田舍の
大きな河をみるよろこび
そのよろこびを
ゆつたりと雲のやうに
ほがらかに
飽かずながして
それをまたよろこんでみてゐる
おなじく
たつぷりと
春は
小さな川々まで
あふれてゐる
あふれてゐる
蝶々
ふかい
ふかい
なんともいへず
此處はどこだらう
あ、蝶々
おなじく
青空たかく
たかく
どこまでも、どこまでも
舞ひあがつていつた蝶々
あの二つの蝶々
あれつきり
もうかへつては來なかつたか
野良道
こちらむけ
娘達
野良道はいいなあ
花かんざしもいいなあ
麥の穗がでそろつた
ひよいと
ふりむかれたら
まぶしいだらう
大《でつ》かい蕗つ葉をかぶつて
なんともいへずいいなあ
おなじく
野良道で
農婦と農婦とゆきあつて
たちばなししてゐる
どつちもまけ
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