てみた

ひらいてみたが
なんにも
なかつた

しつかりと
にぎらせたのも
さびしさである

それをまた
ひらかせたのも
さびしさである

  ほうほう鳥

やつぱりほんとうの
ほうほう鳥であつたよ
ほう ほう
ほう ほう
こどもらのくちまね[#「くちまね」に傍点]でもなかつた
山のおくの
山の聲であつたよ
   *
ほう ほう
ほう ほう
山奧のほそみちで
自分もないてる
ほうほう鳥もないてる
   *
自分もそこにもゐて
ふと鳴いてるとおもはれたよ
ほう ほう
ほう ほう
   *
ほう ほう
ほう ほう
ほんとうのほうほう鳥より
自分のはうが
どうやら
うまく鳴いてゐる

あんまりうまく鳴かれるので
ほんとうのほうほう鳥は
ひつそりと
だまつてしまつた

  まつぼつくり

山のおみやげ
まつぼつくり
ぼつくり
ころころ
ころげだせ
お晝餉《ひる》だよう
鐵瓶の下さたきつけろ

  讀經

くさつぱらで
野良犬に
自分は法華經をよんできかせた
蜻蛉《とんぼ》もぢつときいてゐた
だが犬めは
つまらないのか、感じたのか
尻尾もふつてはみせないで
そしてふらりと
どこへともなくいつてし
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