なに》一つ食《た》べるものもない、ひろいひろい、それは大《おほ》きな、毎日《まいにち》毎晩《まいばん》、夜《よる》も晝《ひる》も翅《か》けつづけで七|日《か》も十|日《か》もかからなければ越《こ》せない大《おほ》きな海《うみ》の上《うへ》をゆくのよ」
「まあ」と、それを聽《き》いて雛《ひな》達《たち》はおどろきました。
「それだからね、翼《はね》の弱《よわ》いものや體《からだ》の壯健《たつしや》でないものは、みんな途中《とちう》で、かわいさうに海《うみ》に落《お》ちて死《し》んでしまふのよ」
氣速《きばや》なのが
「たすけたらいい」と横鎗《よこやり》をいれました。
「ところがね、それが出來《でき》ないの。なぜつて、誰《だれ》も彼《かれ》も自分《じぶん》獨《ひと》りがやつとなのよ。みんな一生懸命《いつしやうけんめい》ですもの。ひとを助《たす》けやうとすれば自分《じぶん》もともども死《し》んでしまはねばならない。それでは何《なん》にもならないでせう。ほんとに其處《そこ》では助《たす》けることも助《たす》けられることもできない。まつたく薄情《はくじやう》のやうだが自分々々《じぶん/″\》で
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