と、喚《わめ》きました。
神樣《かみさま》は、前《まへ》とおなじやうに
「そうか。よくわかつた。俺《わし》はお前達《まへたち》がかわいさうでならない。唯《たゞ》、それだけだ」
「えツ。唯《たゞ》、それだけですつて。ぢあ、酒《さけ》の方《ほう》はどうしてくださるんです」
「それは俺《わし》の知《し》つたことではない」
「まあ、此《こ》の神樣《かみさま》は」
「なんだ」
「酒《さけ》の方《はう》をどうして、くださるつて言《ゆ》つてるじやありませんか」
「そんなことは惡魔《あくま》に聞《き》け!」
ぷりぷり怒《おこ》つてお上《かみ》さんは歸《かへ》りました。歸《かへ》りながら考《かんが》えました。「ええ、馬鹿《ばか》つくせえ。何《なん》とでもなるやうになれだ」と、途中《とちう》で、あらうことかあるまいことか女《をんな》の癖《くせ》に、酒屋《さかや》へその足《あし》ではいりました。
底抜《そこぬ》けにひツ傾《か》けた證據《しやうこ》の千鳥《ちどり》あし、それをやつと踏《ふ》みしめて家《いへ》の閾《しきゐ》を跨《また》ぎながら
「やい、宿《やど》六、飯《めし》をだしてくれ、飯《めし》を。腹
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