《はら》がぺこぺこだ。え。こんなに暗《くら》くなつたに、まだランプも點《つ》けやがらねえのか。え、おい」
おどろいたのは御亭主《ごていしゆ》でした。大變《たいへん》なことになつたものです。天地《てんち》が、ひつくりかえつたやうです。そんな日《ひ》がそれ以來《いらい》、幾日《いくにち》も幾日《いくにち》も續《つゞ》きました。餘《あま》りのおどろきに御亭主《ごていしゆ》は、自分《じぶん》の酒慾《しゆよく》も何《なに》もすつかり、どこへか忘《わす》れました。そして眞面目《まじめ》に働《はたら》きだしました。
するとお上《かみ》さんも考《かんが》えました。その不品行《ふひんかう》が耻《はづか》しくなつて來《き》たのです。
或《あ》る日《ひ》、夫婦《ふうふ》して仲睦《なかむつま》じくお茶《ちや》をのんでゐると、そこへ雉《きじ》の子《こ》が木《き》の葉《は》を一つ葉《ぱ》、啣《くわ》えてきて、おいて行《ゆ》きました。それは裏山《うらやま》の神樣《かみさま》からでした。何《なに》か書《か》いてありました。みると
「さあ、これでお前達《まへたち》の願望《ねがい》はかなつた」
ささげの秘曲
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