何《なん》んだい」
「おお」と蛙《かへる》はおどろきました。
なんだか急《きふ》に池《いけ》の中《なか》がさわがしくなりました。魚類《さかなたち》がいつもの舞踏《ダンス》をはじめたのです。それをみると、もう飛立《とびた》つばかりにうれしくなり、何《なに》もかもすつかり忘《わす》れて
木菟《みゝづく》が
「ほう、ほう、ほろすけほ」
蛙《かへる》も
「がちがちがちがち」
鯛の子
ある日《ひ》、鯛《たひ》の子《こ》が
「お父樣《とうさま》、しばらくお暇《いとま》が戴《いただき》きたうございます」とおそるおそる父《ちゝ》の前《まへ》にでて、お願《ねが》ひしました。そして心《こゝろ》の中《うち》では、どうか聽容《きゝい》れてくれるといいが。
父鯛《おやだい》はそれと聞《き》いて
「おお、汝《そち》は暇《いとま》をもらつて何《なん》とするのか」
「はい、旅《たび》に出《で》やうと思《おも》ひまして」
「む、旅《たび》に」
「はい」
「何處《どこ》へ、そしてまた、何《なに》しに行《ゆ》く」
「はい。私《わたし》はつくづく自分《じぶん》に智慧《ちゑ》の無《な》いことを知《し》りました
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