は人間《にんげん》だ、すこし窮屈《きうくつ》は窮屈《きうくつ》だが、それも風流《ふうりゆう》でおもしろいや。や、海《うみ》がみえるぞ、や、や、船《ふね》だ船《ふね》だ。なんといふことだ。子《こ》ども等《ら》もつれてくるんだつけな。どんなによろこぶだらう、お、お、電車《でんしや》、活動寫眞《くわつどう》の樂隊《がくたい》。とうとう町《まち》へ來《き》たんだな。えツ、ほんとに嬶《かゝあ》や子《こ》ども等《ら》をつれてくるんだつたに。あれ、向《むか》ふにみへるのは何《なん》だ。王樣《わうさま》の御殿《ごてん》かもしれねえ、自分《じぶん》はあそこへ行《ゆ》くのだらう。きつと王樣《わうさま》が自分《じぶん》をお召《め》しになつたんだ。お目《め》に懸《かゝ》つたら何《なに》を第《だい》一に言《ゆ》はう。そうだ。自分《じぶん》の主人《しゆじん》は慾張《よくばり》で、ろくなものを自分《じぶん》にも自分《じぶん》の子《こ》ども等《ら》にも食《た》べさせません、よく王樣《わうさま》の御威嚴《ごゐげん》をもつて叱《しか》つて頂《いたゞ》きたい。と、それから次《つぎ》には……」
 かたりと荷車《にぐるま》がと
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