かほ》をながめたり、からだ中《ぢう》の毛《け》を一|本《ぽん》一|本《ぽん》、綺麗《きれい》に草《くさ》で撫《な》でつけたり、稍《やゝ》、半日《はんにち》もかかりました。
「何《なん》てまあ、いい毛《け》だらう」と、それを第《だい》一に見《み》つけた猫《ねこ》が羨《うらや》ましさうに、まづ賞《ほ》めました。犬《いぬ》も狐《きつね》も野鼠《のねづみ》も、みな
「ほんとにねえ」と同意《どうい》しました。
 兎《うさぎ》はうれしくつてたまりませんでした。すると猫《ねこ》がまた
「けれど、どうも耳《みゝ》が長過《ながす》ぎるね」と、つくづくみてゐて批評《ひひやう》しました。
 それをきくと
「ほんとに、そう言《ゆ》はれてみると、そうだ」一|同《どう》は口《くち》を揃《そろ》えていひました。
 兎《うさぎ》は、はつと思《おも》ひました。そしてみんなの耳《みゝ》をみました。それから自分《じぶん》のを手《て》で觸《さは》つてみました。なるほど長《なが》い!
 そこで早速《さつそく》、理髪店《とこや》に行《い》つてその耳《みゝ》を根元《ねもと》からぷつりと切《き》つて貰《もら》ひました。おもてへ出《で
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