もとの靜穩《しづかさ》にかへると
「どうも此《こ》の喧嘩《けんくわ》は解《わか》らない。晴着《はれぎ》は晴着《はれぎ》でよいではないか。また、單衣《ひとへもの》は單衣《ひとへもの》でよいではないか。晴着《はれぎ》は晴着《はれぎ》。單衣《ひとへもの》は單衣《ひとへもの》。晴着《はれぎ》がいくら立派《りつぱ》でも單衣《ひとへもの》の役《やく》には立《た》たない。單衣《ひとへもの》もそうだ。晴着《はれぎ》の場所《ばしよ》へは向《む》かない。これは彼《かれ》を蔑《さげす》み、彼《かれ》はこれを憤《いきどほ》る。こんなことが、一|體《たい》あつてよいものか」
そして最後《さいご》につくづく感服《かんぷく》したらしくつけ加《くは》へました。
「“Know[#「Know」は底本では「Knaw」と誤記] thyself”(汝《なんぢ》自身《じしん》を知《し》れ)とは、まことに千|古《こ》の金言《きんげん》だ」
耳を切つた兎
山《やま》の兎《うさぎ》がふもとの村《むら》のお祭《まつ》りにでかけました。おしやれな娘兎《むすめうさぎ》のこととて、でかけるまでには谿川《たにがは》へ下《を》りて顏《
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