いつものやうに、そしてにこにことそこに入《はい》り、どつかりと腰《こし》を下《をろ》して冷酒[#「冷酒」は底本では「冷配」と誤記]《ひやざけ》の大《おほ》きな杯《こつぷ》を甘味《うま》さうに傾《かたむ》けはじめました。一|杯《ぱい》一|杯《ぱい》また一|杯《ぱい》。これから腹《はら》がだぶだぶになるまで呑《の》むのです。[#「呑むのです。」は底本では「呑むのです」と誤記]そして眠《ねむ》くなると、虹《にじ》でも吐《は》くやうなをくび[#「をくび」に傍点]を一つして、ごろりと横《よこ》になるのです。と雷《かみなり》のやうな鼾《いびき》です。
荷馬車《にばしや》は重《をも》い。山《やま》のやうな荷物《にもつ》です。
この炎天《えんてん》にさらされて、行《ゆ》くこともならず、還《かへ》りもされず、むなしく、馬《うま》はのんだくれ[#「のんだくれ」に傍点]の何時《いつ》だか知《し》れない眼覺《めざ》めをまつて尻尾《しつぽ》で虻《あぶ》や蠅《はひ》とたわむれながら、考《かんが》へました。かんがへるとしみじみ悲《かな》しくなりました。
「なんといふ一|生《しやう》だらう。こうして荷馬車《にばし
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