ないい翼《はね》をつけてくんろよ」
親《おや》あひる[#「あひる」に傍点]はそつぽを向《む》いて聞《きこ》えないふりをしてゐたが、眼《め》には涙《なみだ》が一ぱいでした。
――「都會と田園」より――
雜魚の祈り
ながらく旱《ひでり》が續《つゞ》いたので、沼《ぬま》の水《みづ》が涸《か》れさうになつてきました。雜魚《ざこ》どもは心配《しんぱい》して山《やま》の神樣《かみさま》に、雨《あめ》のふるまでの斷食《だんじき》をちかつて、熱心《ねつしん》に祈《いの》りました。
神樣《かみさま》はその祈《いの》りをきかれたのか。雨《あめ》がふりました。
沼《ぬま》の干《ひ》てしまはないうちに雨《あめ》はふりましたが、その雨《あめ》のふらないうちに雜魚《ざこ》はみんな餓死《がし》しました。
森の老木
お宮《みや》の森《もり》にはたくさんの老木《らうぼく》がありました。大方《おほかた》それは松《まつ》でした。山《やま》の上《うへ》の高《たか》みからあたりを睨望《みをろ》して、そしていつも何《なん》とかかとか口喧《くちやかま》しく言《い》つてゐました。暑《あつ》ければ、暑《あつ》
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