い。そしてお前《まへ》は成長《せいちやう》したんだ」
若《わか》い木《き》
「それがいまでは唯《たゞ》、日光《につくわう》を遮《さえぎ》るばかりなんだから、やりきれない」
家鴨の子
家鴨《あひる》の子《こ》が田圃《たんぼ》であそんでゐると、そこをとほりかかつた雁《がん》が
「おうい、おいらと行《い》がねえか」
「どこへさ」
「む、どこつて、おいらの故郷《こきやう》へよ。おもしろいことが澤山《たんと》あるぜ。それからお美味《いし》いものも――」
「ほんとかえ」
「ほんとだとも」
「そんならつれていつておくれ」
「いいとも、けれど飛《と》べるか」
家鴨《あひる》に天空《そら》がどうして飛《と》べませう。それども一生懸命《いつしやうけんめい》とびあがらうとして飛《と》んでみたが、どうしても駄目《だめ》なので泣《な》きだし、泣《な》きながら小舎《こや》にかへりました。
雁《がん》はわらつて行《い》つてしまひました。
小舎《こや》に歸《かへ》つてからもなほ、大聲《おほごゑ》で泣《な》きながら「おつかあ、おいらは何《なん》で、あの雁《がん》のやうに飛《と》べねえだ。おいらにもあん
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