いお話《はなし》を」
「ふむむ。それでは一つ聽《き》いてやらうか」
「あんたがしなさいな、何《なに》か」
「俺《おれ》は話《はなし》なんか知《し》らない」
「そんなら……ねえ、唄《うた》つておくれよ、いい聲《こゑ》で」
「唄《うた》か。それも不得手《ふゑて》だ」
「まあ何《なん》にも出來《でき》ないの。ほんとにあんたは鶯《うぐひす》のやうな聲《こゑ》もないし、孔雀《くじやく》のやうな美《うつく》しい翼《はね》ももたないんだね」
 怖《こわ》い目《め》をして烏《からす》がだまりこんだので、雀《すゞめ》らは高《たか》い松《まつ》の木《き》のうへへ逃《に》げながら
からす
からす
廣《ひろ》い世界《せかい》の
にくまれもの
けふも墓場《はかば》で啼《な》いてゐた
かあ、かあ
 それをきくと烏《からす》は噴《ふ》き出《だ》さずにはゐられませんでした。
「へつ、此《こ》の弱蟲《よわむし》! そんなら貴樣《きさま》らには、何《なに》ができる。此《こ》の命知《いのちし》らず奴《め》!」そして肩《かた》をそびやかして睨視《にら》めつけました。
「おれは強《つよ》いぞ」


 石芋

 百|姓《せう》の
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