−4]《かな/\》があるいてきました。翅《はね》などはもうぼろぼろになつて飛《と》べるどころではありません。
機織蟲《ばつた》をみかけると
「毎日《まいにち》、毎日《まいにち》よくまあ、お稼《かせ》ぎですこと」と言《い》ひました。
「はい、仲々《なか/\》埒《らち》があきません。[#「あきません。」は底本では「あきまん。」と誤記]もう、遠《とほ》くの山々《やま/\》は雪《ゆき》がふつたつていひますのに」
「まあ! めつきり朝夕《あさゆう》が冷《つめた》くなりましてね」
「あなたは、もう冬《ふゆ》の準備《おしたく》は」
「その冬《ふゆ》の來《こ》ないうちに蟻《あり》どののお世話《せわ》にならなきやなりますまい」
「え、そんなことが……」
「さあ、なければないのが不思議《ふしぎ》なのです。おやおやお日樣《ひさま》も山《やま》がけへ隠《かく》れた。ではお早《はや》くおしまひになさいまし」
陸稻《をかぼ》畠《ばたけ》の畔道《あぜみち》を、ごほんごほんと咳入《せきい》りながら、※[#「※」は「虫へん+車」、33−7]《かな/\》はどこへゆくのでせう。金泥《きんでい》を空《そら》にながして彩《
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