みにく》く、まつ赤《か》になりました。ぶるぶると身震《みぶる》ひしながら「うむむ、うむむ」と何《なに》か言《い》はうとしても言《い》へないで悶《もだ》えてゐました。
 そして漸《やつ》と
「いまだからそんな口《くち》もきけるんだ。此《こ》の尼《あま》つちよめ!……貴樣《きさま》が花《はな》だつた時分《じぶん》ときたらな……どうだい、あの吝嗇《けち》くせえ小《ちつ》ぽけな、消《け》えてなくなりさうな花《はな》がさ。それでも俺《おい》らは何《んない》とも言ひやしなかつた……自分《じぶん》のことは棚《たな》に上《あ》げたなり忘《わす》れてしまつて。お前《めえ》はあれでも耻《はづか》しいとも何《なん》とも思《おも》つてはゐなかつたのか」とどもり吃《ども》り、つぎはぎだらけの仕返《しかえ》しをして、ほつと呼吸《いき》をつきました。
 甜瓜《まくはうり》は葉《は》つぱのかげで、その間《あひだ》、絶《た》えずくすくす笑《わら》つてゐました。
 けれども南瓜《かぼちや》はくやしくつて、くやしくつて、たまらず、その晩《ばん》、みんなの寢靜《ねじづ》まるのを待《ま》つて、地《ぢ》べたに頬《ほつぺた》をすり
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