》さ」


 口喧嘩

 南瓜《かぼちや》と甜瓜《まくはうり》と、おなじ畑《はたけ》にそだちました。種子《たね》を蒔《ま》かれるのも一しよでした。それでゐて大《たい》へん仲《なか》が惡《わる》かつたのです。
 おたがひに日《ひ》に々々|大《おほ》きく、いまは人間《にんげん》の眼《め》をひくほどになりました。
 或《あ》る日《ひ》、おてんば娘《むすめ》の甜瓜《まくはうり》が、かぼちや[#「かぼちや」に傍点]に毒舌《どくぐち》を吐《つ》きました。
「よお。おむかうの菊石《あばた》顏《づら》の若《わか》だんな。おほゝゝゝ。なにをそんなにお欝《ふさ》ぎなの、大抵《たいてい》で諦《あきら》めなさいよう。いくらかんがえたつて、みつともない。第《だい》一そのお面《めん》ぢやはじまらないんだから」
 それをきいたかぼちや[#「かぼちや」に傍点]の怒《をこ》つたの怒《をこ》らないのつて、石《いし》のやうな拳固《げんこ》をふりあげて飛《と》び懸《かか》らうとしましたが、蔓《つる》が足《あし》にひつ絡《から》まつてゐて動《うご》かれない。くやしさに鬼《をに》のやうな顏《かほ》がいよいよ鬼《をに》のやうに醜《
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