の觀念《くわんねん》の目《め》をとぢました。そして二|度《ど》と再《ふたゝ》びひらきませんでした。
莢の中の豆
莢《さや》の中《なか》には豆粒《まめつぶ》が五つありました。そして仲《なか》が善《よ》かつたのです。けふもけふとて、むつまじくはなしてゐました。
「もう外《そと》にでる日《ひ》が近《ちか》くなつたやうだね」
「どんなに美《うつく》しいでせう、世界《せかい》は」
「はやくみたいなあ」
「外《そと》にでても、此處《こゝ》で一つの莢《さや》の中《なか》で、かうしてお互《たが》ひに大《おほ》きくなつたことをわすれないで、仲善《なかよ》くしませうね」
「ええ」
ある日《ひ》の午後《ごゞ》。ぱちツと不思議《ふしぎ》な音《をと》がしました。莢《さや》が裂《さ》けたのです。豆《まめ》は耳《みゝ》をおさえたなり、地《ぢ》べたに轉《ころ》げだしました。
そしてばらばらになつてしまひました。
鳩はこたへた
鳩《はと》はお腹《なか》が空《す》いてゐました。朝《あさ》でした。羽蟲《はむし》を一つみつけるがはやいか、すぐ屋根《やね》から庭《には》へ飛《と》びをりて、それを捕《つか
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