》は行《ゆ》けばわかります。だがね、そいつは生《い》きてるから、近《ちかづ》いたら飛《と》びついて、すぐ噛殺《かみころ》さないと逃《に》げられますよ、よござんすか。では、さよなら」
「どうも有難《ありがた》う、お孃《じやう》さん。いつかお禮《れい》はいたします」
あくる朝《あさ》のこと。
農夫《のうふ》が畑《はたけ》にきてみたら、大《おほ》きな土鼠《もぐら》がまんまと捕鼠器《ほそき》に掛《かゝ》つてゐました。
茶店のばあさん
崖《がけ》の上《うへ》の觀音樣《くわんのんさま》には茶店《ちやみせ》がありました。密柑《みかん》やたまご[#「たまご」に傍点]、駄菓子《だぐわし》なんどを並《なら》べて、參詣者《おまへりびと》の咽喉《のど》を澁茶《しぶちや》で濕《しめ》させてゐたそのおばあさんは、苦勞《くらう》しぬいて來《き》た人《ひと》でした。
ある日《ひ》、その店前《みせさき》へ一はの親雀《おやすゞめ》がきて
「いつも子《こ》ども等《ら》がきてはお世話《せわ》になります」
と丁寧《ていねい》にお禮《れい》をのべました。
おばあさんは不審《ふしん》さうな顏《かほ》をして
「いいえ。私《わたし》じやないでせう」と言《い》つた。それをきいて、側《そば》についてきてゐた子雀《こすゞめ》が「今朝《けさ》もお米《こめ》を頂《いたゞ》いてよ」
「私《わたし》に、そんなおぼえは無《な》い」
ほそい煙《けむり》こそ立《た》ててゐるが此《こ》のとしより[#「としより」に傍点]は正直《しやうじき》で、それに何《なに》かを决《けつ》して無駄《むだ》にしません。それで、パン屑《くづ》や米粒《こめつぶ》がよく雀《すゞめ》らへのおあいそにもなつたのでした。
その晩《ばん》のことです。
こつそりとおばあさんのゆめ[#「ゆめ」に傍点]に雀《すゞめ》がしのびこんで來《き》て、そして遠《とほ》くの遠《とほ》くの竹藪《たけやぶ》の、自分等《じぶんら》の雀《すゞめ》のお宿《やど》につれて行《い》つておばあさんをあつくあつく饗應《もてな》したといふことです。
烏を嘲ける唄
雀《すゞめ》が四五|羽《は》で、凉《すゞ》しい樹蔭《こかげ》にあそんでゐると、そこへ烏《からす》がどこからか飛《と》んで來《き》ました。
そして「何《なに》してゐたんだ」
「お話《はなし》をしてゐたのよ。おもしろ
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