》だらう。うつかり秘密話《ないしよばなし》もできやしない」と、大《たい》へん叱《しか》られました。鸚鵡《あふむ》は叱《しか》られてどぎまぎしました。多分《たぶん》、口《くち》まねが拙手《へた》なので、だらうとおもひまして、それからと言《い》ふものは滅茶苦茶《めちやくちや》にしやべり續《つゞ》けました。叱《しか》られれば叱《しか》られるほどしやべりました。
「ええ、ゆふべ、泥棒《どろぼう》……何《なん》て馬鹿《ばか》だろ……白瓜《しろうり》一|本《ぽん》、反物《たんもの》三だん……うつかり秘密話《ないしよばなし》もできやしない」
夫婦《ふうふ》は困《こま》つてしまひました。そして、鳥屋《とりや》へもつて行《い》つて賣《う》りました、けれどそれが運《うん》の盡《つ》きでした。その嘴《くち》からの言葉《ことば》で、とうとう二人《ふたり》は捕《つかま》つて、暗《くら》い暗《くら》い牢獄《ろうごく》のなかへ投《な》げこまれました。
土鼠の死
土鼠《もぐら》が土《つち》の中《なか》をもくもく掘《ほ》つて行《ゆ》きますと、こつりと鼻頭《はながしら》を打《ぶ》ツつけました。うまいぞ。それが何《なん》だかよく見《み》もしないで、仲間《なかま》に氣《き》づかれないやうに、そのまま、そつと砂《すな》をかけて、知《し》らない顏《かほ》をして引《ひ》き返《か》えしました。あとで來《き》て、獨《ひと》りでそれを食《た》べやうとおもつて。
途中《とちう》で友《とも》だちに逢《あ》ひました。
「どうしたんだ」
「む、大《おほ》きな木《き》の根《ね》つこで行《ゆ》かれやしない、駄目《だめ》だ」
夜《よる》になりました。こつそりでかけました。そして見《み》て驚《おどろ》きました。「[#【「】は原文では【」】と誤記、43−10]なあんだ。こりや石《いし》じやないか。ちえツ、馬鹿々々《ばか/″\/″\》しい」
そこへ、するすると意地《いぢ》の惡《わる》い蚯蚓《みゝず》が匍《は》ひだしてきました。
「何《なん》ぼ何《なん》でも石《いし》は喰《く》はれませんよ。晩餉《ごはん》はまだなんですか。そんならおしへて上《あ》げませう。此處《こゝ》を左《ひだり》へ曲《まが》つて、それから右《みぎ》に折《を》れて、すこし、あんたと昨日《きなふ》あつた路《みち》のあの交叉點《よつかど》です。品物《しなもの
前へ
次へ
全34ページ中10ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
山村 暮鳥 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング