まり肺結核の大学生を置いてやることにしたという。或る日この大学生は縊死《いし》を遂《と》げた。
 その手入《ていれ》を加えた物置というのは、今の学生二人のいる表二階の一室《ひとま》で、人間の身の丈《た》けぐらいに白い光りの見ゆるのが、その大学生が縊死《いし》を遂《と》げた位置と寸分違わない。やっと葬送を済《すま》したのがつい二ヶ月程前であるが、折角《せっかく》手入《ていれ》を加えてただ空けておくのも何だから、お借し申したような次第であるが、さては左様でございますかという。これが『白い光り』と題した話の大略《たいりゃく》である。
 もう一つの『上野の鐘』は、岩村《いわむら》さんのお話しの『学士会院《ラシステキュー》の鐘』と好一対《こういっつい》とも云うべきで、少し故《ゆえ》あって明白地《あからさま》に名前を挙げるのは憚《はばか》りあるけれど、私の極《ご》く懇意な人のそのまた姉《あね》さんのそのまた婿さんの実話である。その場所は和泉橋《いずみばし》を入ったところの仲徒士町《なかおかちまち》とだけ言っておこう。今も住んでいるのが、つまり明々白地《あからさま》に言うのを憚《はばか》る所以《ゆえ
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