議を立てるようになった。もう一人の友達もこれには至極《しごく》同感で、実はその白い物が自分の目にも見えて、どうも気分が勝《すぐ》れないと言った。そこで早速《さっそく》下宿の主人を呼んで、この旨を聞き訊《ただ》すところまで話が進む。
すると主人の話口《はなしくち》はこうなのである。イヤ実は私の家に、九州《きゅうしゅう》の人で、三年あまり下宿していた大学生があった。この大学生は東京《とうきょう》に在学中、その郷里の家が破産をして、その為《た》め学資の仕送りも出来ないようなわけになって、大変困る貧窮《ひんきゅう》なことになった。それにこの大学生は肺結核を煩《わずら》っていて、日に増し悲観な厭世《えんせい》に陥るようになった。あれやこれやで何処《どこ》か他《わき》へ宿替《やどがえ》をするようなことになった。その時主人は、幸い物置が空《あ》いている。あすこへ畳を敷いて勉強の出来るようにしてやるから、その代わり大《たい》して構い立《だ》ては出来ないが、自分の家にいる意《つもり》で、ゆっくり気長に養生でもしたらいいでしょうと、まア好意ずくで薦めた。そしてその物置へは多少の手入《ていれ》を加えて、つ
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