暗夜の白髪
沼田一雅
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【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)最早《もう》
|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)芝《しば》警察署|詰《づめ》
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最早《もう》九年ばかり以前の事だ、当時私の宅へよく遊びに来た芝《しば》警察署|詰《づめ》の某氏の実見談《じっけんだん》である。その男というのはその時分|丁度《ちょうど》四十一二ぐらいで、中々《なかなか》元気な人だったし、且《か》つ職務柄、幽霊の話などは初《てん》から「何《な》んの無稽《ばか》な」と貶《けな》した方だった、がしかしその男がこの時ばかりは「君《きみ》実際|恐怖《おそろし》かったよ」と顔色を変えて私に談《はな》したくらいだから、当人は余程凄かったものだろう、いや聴いていた私さえその時に思わずゾーッとしたくらいだったから。咄《はなし》というのは斯《こ》うだ。何でも当時その男が転居をした家の出来事だ。所は芝《しば》烏森《からすもり》で俗に「林《はやし》の屋敷」と呼ばれていた屋敷長屋の端《はず》れの家《うち》だったが、家内《うち》の間取《まどり》といい、庭の趣《おもむき》といい、一寸《ちょっと
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