待《ぎゃくたい》を受け、嬰児《こども》を抱いたまま棟木《むなぎ》に首を吊《つっ》て、非命の最期を遂げた、その恨みが残ったと見えて、それから変事が続きて住《すま》いきれず、売物に出したのを或《ある》者が買《かい》うけ、その土蔵を取払《とりはら》って家を建直《たてなお》したのだが、未《いま》だに時々不思議な事があるので、何代|替《かわ》っても長く住む者が無いとの事である。

◎山城《やましろ》の相楽郡木津《さがらぐんきづ》辺の或る寺に某と云う納所《なっしょ》があった、身分柄を思わぬ殺生好《せっしょうずき》で、師の坊の誡《いまし》めを物ともせず、例《いつ》も大雨の後には寺の裏手の小溝へ出掛け、待網を掛けて雑魚《ざこ》を捕り窃《ひそ》かに寺へ持帰《もちかえ》って賞玩《しょうがん》するのだ、この事|檀家《だんか》の告発に依《よ》り師の坊も捨置《すておき》がたく、十分に訓誡《くんかい》して放逐《ほうちく》しようと思っていると、当人の方でも予《あらかじ》めその辺《あたり》の消息を知り、放逐《ほうちく》されると覚悟をすれば、何も畏《おそ》れる事は無いと度胸を極《き》め、或《ある》夜師の坊の寝息を考え、
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