からず可愛《かあい》がってやった、頃は恰度《ちょうど》、秋の初旬《はじめ》九月頃だったろう、ふと或《ある》朝――五時前後と思う――寝室の闥《ドア》がガチリと開《あ》いた様な音がしたので自分は思わず目が覚めてみると、扉のところに隣の主人が、毎日見る、矢張《やっぱり》巡査の様な服装を着けて、茫然と立っている、ハッと思うと、ズーッと自分の寝台《ねだい》の二|間《けん》ばかり前まで進んで来たが、奇妙に私はその時には口もきけない、ただあまり突然の事だから、吃驚《びっくり》して見ていると、先方《さき》でも何言《なにごと》も云わずにまた後方《うしろ》へ居《お》って、何処《どこ》ともなく出て行ってしまった、何分《なにぶん》時刻が時刻だし、第一昨夜私は寝る前に確かに閉めた闥《ドア》が外から明《あ》けられる道理がない、また今見た姿を隣人《となりのひと》とは思ったが寝ぼけ眼の事だから、もしや盗賊《どろぼう》ではないかと私は直《すぐ》に寝台《ねだい》から飛下《とびお》りて行って闥《ドア》の錠《じょう》を検《しら》べると、ちゃんとかかっている、窓の方や色々《いろいろ》と人の入った形跡を見たが、何処《どこ》からも
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