千ヶ寺詣
北村四海

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【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)現今《いま》

|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)親子三人|暮《ぐらし》
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 現今《いま》私の家《うち》に居《い》る門弟の実見談《じっけんだん》だが、所は越後国西頸城郡市振村《えちごのくににしくびきぐんいちふりむら》というところ、その男がまだ十二三の頃だそうだ、自分の家《うち》の直《じ》き近所に、勘太郎《かんたろう》という樵夫《きこり》の老爺《おやじ》が住んでいたが、倅《せがれ》は漁夫で、十七ばかりになる娘との親子三人|暮《ぐらし》であった、ところがこの家《うち》というのは、世にも哀れむべき、癩病《らいびょう》の血統《すじ》なので、娘は既に年頃になっても、何処《どこ》からも貰手《もらいて》がない、娘もそれを覚《さと》ったが、偶然《ふと》、或《ある》時父兄の前に言出《いいい》でて、自分は一代法華《いちだいほっけ》をして、諸国を経廻《へめぐ》ろうと思うから、何卒《どうか》家を出してくれと決心の色を現《あらわ》したので、父も兄も致方《いたしかた》なく、これを許したから、娘は大変喜んで、早
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