ど》は手で強く払って歩き出してみた、が矢張《やっぱり》蝶は前になり後になりして始終私の身辺に附いて来る、走ってみたらと思ったので、私は半町《はんちょう》ばかり一生懸命に走ってみた、蝶もさすがに追ってこられなかったものか、最早《もう》何処《どこ》にも見えないので、やれ安心と、ほっと一息付きながら歩き出した途端、ひやりと頸筋《くびすじ》に触れたものがある、また来たかとゾーッとしながら、夢中に手で払ってみると、果《はた》せるかな、その蝶だ、もう私も堪《た》え兼《か》ねたので、三|町《ちょう》ばかり、向《むこ》う見《み》ずに馳《か》け出して、やっとのことで、赤羽橋まで来て、初めて人心地《ひとここち》がついた、清正公《せいしょうこう》の此処《ここ》の角を曲ると、もう三田の夜店の灯《ひ》が、きらきら賑《にぎや》かに見えたのだ、この時には蝶も、あたりに見えなかった、が丁度《ちょうど》その間四五|町《ちょう》ばかりというものは、実に、一種何物かに襲われたかのような感《かんじ》がして、身体《からだ》が、こう何処《どこ》となく痳痺《まひ》したようで、とても言葉に言い現わせない心持《こころもち》であった、し
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