死体室
岩村透
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【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)腫物《できもの》
|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)今度|躯《からだ》に
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私は今度|躯《からだ》に腫物《できもの》が出来たので、これは是非共《ぜひとも》、入院して切開をしなければ、いけないと云うから、致方《いたしかた》なく、京都《きょうと》の某病院へ入《い》りました。その時、現今《いま》医科大学生の私の弟が、よく見舞に来てくれて、その時は種々《しゅじゅ》の談《はなし》の末、弟から聴いた談《はなし》です。
元来病院というものは、何となく陰気な処《ところ》で、静かな夜に、隣室から、苦しそうな病人の呻吟《うめきごえ》が聞えてきたり、薄暗い廊下を白い棺桶が通って行ったりして、誠《まこと》に気味の悪《わ》るいものだが、弟はその病院の二階にある解剖室で、或《ある》晩十時頃まで、色々人骨を弄《ひね》くって、一人で熱心に解剖学の研究をしていたが、最早《もはや》夜も更《ふ》けたので、家へ帰ろうと思ってその室へ錠を下ろして、二階から下りて来ると、その下にある中庭の直《す》ぐ傍《わき》の、薄暗い廊下
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