感応
岩村透

−−
【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)巴里《ぱり》

|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)息子|即《すなわ》ち
−−

 私がまだ巴里《ぱり》で画生《がせい》をしていた時分は、一緒に部屋借りをしていたのは、布哇《はわい》生れの米国人であった。この人の描《か》いた画《が》は、日本でも誰《たれ》か持っている人があるだろうが、中々《なかなか》巧いもので、殊《こと》に故郷の布哇《はわい》で有名な、かの噴火口の夜景が得意のものであった。この人は彼地《かのち》有名の銀行家ビショップ氏の推薦により、特に布哇《はわい》出身の美術家を養成する目的で、この巴里《ぱり》の美術学校へ送られたのである。私はこの男と共に、巴里《ぱり》の一寓《いちぐう》に住まって、朝夕皿を洗ったり、煮物をしたりして、つまり二人で自炊生活を営んでいたのであった。食後の休みなどには、種々《しゅじゅ》の世間談《せけんばなし》も初まったが、この怪談というものは、何《いず》れの人々も、興味を持つものとみえて、私等は或《ある》晩のこと、偶々《たまたま》それを初めたのであった。
 この男が、
次へ
全4ページ中1ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
岩村 透 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング