あった肺病が一層《いっそう》悪くなって終《つい》に娘はどっと床についた、妻《かない》がこんな病気になったからとて、夫は別に医師にかけるではなし、結局それを楯に出て行《ゆ》けがしのしうちをして、相変らず外遊びはやまなかった、娘の実家でも病気という事の趣《おもむき》を聞いて早速実母が看病にと泊りに来た、するとあろう事かあるまい事か、夫も夫なら母も母だ[以下、二十二字分の伏字あり]人面獣心《じんめんじゅうしん》のこの二人は、今かかる病床に苦しんでいる娘の枕許《まくらもと》で、[以下、十字分の伏字あり]け散らしていた。嫁入《よめいり》の時に持って来た衣服《いしょう》道具などはいつしかもうこの無情な夫の遊蕩《ゆうとう》の費《ひ》となって失われておった。私も兼《かね》て病気と聞き見舞《みまい》に行《ゆ》きたいと思ったが、何をいうにも前述の如き仕儀《しぎ》なので、反《かえっ》て娘の為《た》めに見舞《みまい》にも行《ゆ》けず蔭ながら心案じていたのである、幸《さいわい》に心やさしい婢女《げじょ》の看護に、いくらか心をなぐさめられて、おしからざる命を生きながらえていました。左様《さよう》、床には四ヶ月も居
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