にしたのがそもそも娘の不運の基《もと》であった。
 両親は頗《すこぶ》る喜んで早速この由《よし》を先方《さき》へ通ずる、そこで、かたの如く月下氷人《なこうど》を入れて、芽出度《めでた》く三々九度も終ったというわけだ。
 男というのは当時某会社に出勤していたが、何しろこんなにまで望んで嫁《と》った妻《かない》のことでもあるから、若夫婦の一家は近所の者も羨《うら》やむほど睦《むつま》じかった。しかしこれもほんの束の間、後《あと》でだんだん知れてみると、この男というのは性質の頗《すこぶ》るよくない奴で、女房を変えること畳を変えるが如きほどにも思っていない、この娘が丁度《ちょうど》三人目だとの事、それもこれも最早《もはや》後の祭りで既に遅い、男はそろそろ妻《かない》に秋風が吹いて来た、さあ、こうなると、こんなつまらない女房は無い家《うち》へ帰ってもつまらないと、会社からすぐ茶屋へ廻《まわ》るという有様《ありさま》で、始終|家《うち》を外の放蕩三昧《ほうとうざんまい》、あわれな妻《かない》を一人残して家事の事などは更《さら》に頓着《とんじゃく》しない、偶《たま》に帰宅すれば、言語《もの》のいい様
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