となったが、技術の上には前いう如く天稟《てんりん》的だし当人も非常に好きなものだから技術は日に増し上達する。自分も特別心懸けて教えていたが、その時分は最早《もはや》自分で大分《だいぶん》門弟をとって立派にかんばんをかける様になった。ところが娘はそうは云うものの両親も一度はそれを許してもみましたが、最早《もう》年頃でもあるし同じ朋輩《ほうばい》が皆《みんな》丸髷《まるまげ》姿に変るのを見ると親心にもあまり良《い》い心持《こころもち》もしない、実は密《ひそ》かに心配をしていたのだ。すると突然縁談が起《おこ》ったというのは、何でも、その娘を或《ある》男が外で見染めたとかで、是非というつまり容貌《きりょう》望みで直接に先方から懇望《こんもう》して来たのである。両親も大変喜んで種々《いろいろ》先方《さき》の男の様子も探ってみたが大した難もないし、殊《こと》に先方からの強《た》っての懇望《のぞみ》でもあるから、至極良縁と思ってそれを娘に談《はな》すと、一度は断ってはみたが、もとより両親の言《ことば》ではあるし、自分でも強いて淋しい生活に入るのを望むわけでもないから、一切《いっせつ》両親にまかすこと
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