せてこれをととのうるに塩味をもってし、第二沸に茶を入れる。第三沸には少量の冷水を※[#「金+腹のつくり」、第4水準2−91−15]《かま》に注ぎ、茶を静めてその「華(一四)」を育《やしな》う。それからこれを茶碗に注いで飲むのである。これまさに神酒! 晴天|爽朗《そうろう》なるに浮雲鱗然《ふうんりんぜん》たるあるがごとし(一五)。その沫《あわ》は緑銭の水渭《すいい》に浮かべるがごとし(一六)。唐の詩人|盧同《ろどう》の歌ったのはこのような立派な茶のことである。
[#ここから2字下げ]
一|椀《わん》喉吻《こうふん》潤い、二椀|孤悶《こもん》を破る。三椀枯腸をさぐる。惟《おも》う文字五千巻有り。四椀軽汗を発す。平生不平の事ことごとく毛孔に向かって散ず。五椀|肌骨《きこつ》清し。六椀|仙霊《せんれい》に通ず。七椀|吃《きつ》し得ざるに也《また》ただ覚ゆ両腋《りょうえき》習々清風の生ずるを。蓬莱山《ほうらいさん》はいずくにかある 玉川子《ぎょくせんし》この清風に乗じて帰りなんと欲す(一七)。
[#ここで字下げ終わり]
茶経の残りの章は、普通の喫茶法の俗悪なこと、有名な茶人の簡単な実録、有名な
前へ
次へ
全102ページ中23ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
岡倉 覚三 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング