二人の女歌人
片山廣子
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【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)寝《ね》ればや
|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)和田峠|常《とき》
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)[#ここから2字下げ]
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小野小町は小野の篁の孫で、父は出羽守良真とも伝へられ、仁明、文徳、清和の頃の人と思はれるが、生死の年月もはつきり分らず、伝説は伝説を生み、今の私たちには彼女が美しかつたといふ事と、すぐれた歌人であつたといふことだけしか伝はらない。久しぶりにこの頃小町の歌を読みかへす機会があつたが、時代のずれといふやうなものを少しも感じないで読んだ。現代の歌は心理的にかたむいて私にはだんだんむづかしくなつて来てゐる時、むかし私が「歌」と教へられてゐたさういふ歌にまたもう一度めぐり会つたやうな感じであつた。彼女の家集の歌はさう沢山はないけれど、すこし抜いてみよう。
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花の色はうつりにけりな徒らにわが身世にふるながめせしまに
山里のあれたる宿を照らしつつ幾夜へぬらむ秋の月影
思ひつつ寝《ね》ればや人の見えつらむ夢と知
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