或る国のこよみ
片山廣子
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【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)垂水《たるみ》
|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)一夜|宿《ね》にける
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)[#ここから2字下げ]
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はじめに生れたのは歓びの霊である、この新しい年をよろこべ!
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一月 霊はまだ目がさめぬ
二月 虹を織る
三月 雨のなかに微笑する
四月 白と緑の衣を着る
五月 世界の青春
六月 壮厳
七月 二つの世界にゐる
八月 色彩
九月 美を夢みる
十月 溜息する
十一月 おとろへる
十二月 眠る
[#ここで字下げ終わり]
ケルトの古い言ひつたへかもしれない、或るふるぼけた本の最後の頁に何のつながりもなくこの暦が載つてゐるのを読んだのである。この暦によると世界は無限にふくざつな色に包まれてゐる。一月二月三月四月の意味はよくわかる。五月が青春であるのは、わが国に比べるとひと月遅いやうに思はれる、もつと北に寄つた国であるからだらう。したがつて、六月のすばらしさも一月おくれかもしれぬ。七月
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