、霊が二つの世界にゐるといふのは、生長するものと衰へ初めるものとの二つの世界のことであらうか? 八月、色彩といふのは空の雲、飛ぶ鳥の羽根や、山々のみどり、木草の花の色、それが一時にまぶしいほど強烈で、ことに北の国は春から夏に一時にめざましい色を現はす。九月、美を夢みるといふのは八月の美しさがまだ続いて、やや静かになつてゆく季節。十月は溜息をする、さびしい風が吹く。十一月、すべての草木が疲れおとろへ、十二月、眠りに入る。この霊といふ字がすこし気どつた言葉のやうで、これを自然といふ字におき代へて読みなほしてみた。その方がはつきりする。
この季節を色別けしてみると、白、うす黄、青、緑、紅と菫いろ、黄と赤、灰色と黒、こんなものかと思はれる。陰陽五行説といふことをいつぞや教へられた。それは、木火金水に春夏秋冬の四時、青赤白黒の四色を配したのださうである。春が青く、夏が赤く、秋が白く、冬が黒いのである。私にはかういふむづかしい事はよく分らないけれど、染色の方からいふと、普通に原色といふのは紅黄青である。青は黒に通じ、紅は黄をふくみ、紫にも通じる。白は? 白は或る時は黒くもなり、青くもなるやうであ
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