ての不安は枯葉色、そんな複雑な色の交る歌と思つた。
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「桐の葉も踏み分けがたくなりにけり必らず人と待つとならねど
「木の葉ふりしぐるる雲の立ち迷ふ山の端みれば冬は来にけり
「甚《はなは》だも降らぬ雪ゆゑこちたくも天つみ空は曇らひにつつ
「寂しさに耐へたる人のまたもあれな庵ならべむ冬の山里
「鵲のわたせる橋におく霜の白きをみれば夜ぞ更けにける
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桐の葉は、あたらしい落葉も古い落葉もすべて枯葉いろ、新しく散つたばかりの時すこしは秋の黄ばんだ色も見えるだらう。作者の心は灰いろである。山の木の葉が散るとき、赤いもみぢ葉も黄いろい葉も交る。つまらない枯葉も交る、しぐれる雲はうす墨のいろ。あまりたくさん降らない雪がまだ空にいつぱい残つてゐる時、空も空気もすべて銀ねずみ色。寂しい冬の山里は何も色がない。西行が一人住むその庵だけが、遠くから見れば、黒くも褐色にも眺められるだらう。夜が更けてお庭の霜がしろい、しかしその白さを包んで夜の黒さがある、作者も読者もその暗い寒さを感じてゐる。(私の手許に古い歌の本が何もないので、殆どめちやに書き並べた)
こんな色
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