よめいり荷物
片山廣子

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【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)油単《ゆたん》

|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)五|荷《か》の

[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)ぬひ[#「ぬひ」に傍点]
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 今から四十年あるひは五十年ぐらゐ前の嫁入支度はたいてい千五百円から二千円ぐらゐの金で充分間に合つたのである。その二千円を今の金に計算してみるとかなりの物かも知れないが、とにかく娘が三人あつたとして、二千円づつ六千円ぐらゐならば、親たちもどうにか出すことが出来たらしい。
 およめさんの荷物は、民間では、五|荷《か》の荷物がごく普通であつた。三|荷《か》では少しさびしく、七|荷《か》ではちいつとばかり贅沢だつたが、だいじな一人娘なぞには親がきばつて七荷にすることが多かつた。三荷の荷物では、油単《ゆたん》をかけた箪笥一つ、吊台二つ。一つの方の吊台には夜具二人前を入れたもえぎ唐草の風呂敷づつみ、座ぶとん五枚、行李二つ位、もう一つの吊台には机や鏡台その他身のまはりの小物をのせる、これは沢山の物があるほどお嫁さんは調法するが、親の方
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