ぐ人間の数も増える。それであとから送るといふやうな智慧を出すこともあつて、そんな智慧は大てい仲人が考へ出すことになつてゐた。
七荷の荷物だとずつとゆつくり荷物がはいつた。箪笥三棹、長持二つ、吊台二つであるが、この場合長持一つで、吊台を三つにする人もあつた。琴、三味線もむろんこの吊台にのせる。花聟の家がせまい場合には長持を二つ置くだけの場席がないから、広すぎる古い家庭でない限り、花聟の家の方でたいていは二つの長持は辞退するのが多かつた。一つの長持でも、新婚の小さい家では、長持が玄関に置かれてひどくきうくつに見えることが多かつた。
七荷の荷物までは普通の嫁入り荷物であつたが、貴族とか大店《おほだな》のお嬢さんのよめいり荷物は、十三荷があたり前の事になつてゐた。(九荷といふ荷物はなかつた。九《く》は苦《く》に通じるから嫌はれたらしい。十一荷では少しはんぱの数だから十三と極めたのであらう。西洋風に勘定すれば十一の方が十三よりは数がよろしいけれど、昔はそんな事は知らなかつた)さういふ大騒ぎをする嫁入りは仲人も大てい二組あつて、おもて向きのお席に坐る仲人と、事務の仲人、どちらも必要である。
前へ
次へ
全7ページ中3ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
片山 広子 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング