ずね》、奴《やっこ》の尻の寒晒《かんざら》し。今の世には勤人《つとめにん》が暑中の洋服。いつの世にも勤はつらいものなり。
○近年堅きカラーの代りにシャツと同色《ともいろ》の軟きカラーを用ゆるものあり。これまた米国の風にして欧洲にては多く見ざる所なり。米国にても若き人|専《もっぱら》これを用ひ老人はあまり用ひず。
○パナマ帽は欧洲にても大陸の流行にて英国にては用る者少し。米国もまた然り。英米人の夏帽子には麦藁《むぎわら》多しと、五、六年前帰朝者の語る所なり今は知らず。
○ハンケチは晒麻《さらしあさ》の白きを上等とす。繍取《ぬいとり》または替り色は婦人のものなり。男子これを用る時は気障《きざ》の限りなるべし。米国にてはきざな男折々ハンケチを上衣《うわぎ》胸のかくしよりちよつと見せる風あり。英国人は袖口へハンケチを丸めて入れ込む風あり。
○米国人は雨中といへども傘を携へず。いはんや晴天の日傘《ひがさ》をや。細巻の洋傘ステッキの如くに細工したるものは旅行用なり。熱帯の植民地は一日に二、三回|必《かならず》驟雨《しゅうう》来るが故に外出の折西洋人は傘を携ふ。日本の気候四季共に雨多し。植民地の風を
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