《そけい》の花と而してこの来青花に対すれば必《かならず》先考日夜愛読せし所の中華の詩歌|楽府《がくふ》艶史の類《たぐひ》を想起せずんばあらざるなり。先考の深く中華の文物を憬慕《けいぼ》せらるゝや、南船北馬その遊跡十八省に遍《あまね》くして猶足れりとせず、遥に異郷の花木を携帰《たづさへかへ》りてこれを故園に移し植ゑ、悠々として余生を楽しみたまひき。物|一度《ひとたび》愛すれば正に進んで此《かく》の如くならざる可からず。三昧の境《きやう》に入るといふもの即ちこれなり。われ省みてわが疎懶《そらん》の性遂にこゝに至ること能はざるを愧づ。
底本:「日本の名随筆1 花」作品社
1983(昭和58)年2月25日第1刷発行
2001(平成13)年3月20日第29刷発行
底本の親本:「荷風全集 第一四巻」岩波書店
1963(昭和38)年6月発行
入力:門田裕志
校正:noriko saito
2009年11月28日作成
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