断腸亭|奴僕《ぬぼく》次第に去り園丁来る事また稀なれば、庭樹|徒《いたずら》に繁茂して軒を蔽い苔は階《きざはし》を埋め草は墻《かき》を没す。年々|鳥雀《ちょうじゃく》昆虫の多くなり行くこと気味わるきばかりなり。夕立おそい来《きた》る時窓によって眺むれば、日頃は人をも恐れぬ小禽《ことり》の樹間に逃惑うさまいと興あり。巣立して間もなき子雀蝉とともに家の中《うち》に迷入ること珍らしからず。是れ無聊を慰むる一快事たり。



底本:「日本の名随筆18 夏」作品社
   1984(昭和59)年4月25日第1刷発行
   1999(平成11)年11月20日第20刷発行
底本の親本:「荷風全集 第一四巻」岩波書店
   1963(昭和38)年6月発行
入力:門田裕志
校正:noriko saito
2009年12月4日作成
青空文庫作成ファイル:
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