今朝《けさ》の横雲
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新樹
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[#地から10字上げ]紀躬鹿《きのみじか》
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花の山にほひ袋の春過ぎて青葉ばかりとなりにけるかな
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更衣《ころもがえ》
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[#地から10字上げ]地形方丸《じぎょうかたまる》
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夏たちて布子《ぬのこ》の綿はぬきながらたもとにのこる春のはな帋《がみ》
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江戸の東京と改称せられた当時の東京絵図もまた江戸絵図と同じく、わが日和下駄の散歩に興味を添えしむるものである。
私は小石川なる父の家の門札《もんふだ》に、第四|大区《だいく》第何小区何町何番地と所書《ところがき》のしてあったのを記憶している。東京府が今日の如く十五区六郡に区劃されたのは、丁度私の生れた頃のこと。それまでは十一の大区に分たれていたのである。私は柳北《りゅうほく》の随筆、芳幾《よしいく》の綿絵《にしきえ》、清親《きよちか》の名所絵、これに東京絵図を合せ照してしばしば明治初年の渾沌《こんとん》たる新時代の感覚に触るる事を楽しみとする。
市
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