てうえ》の銀杏と称せられるものの如き、いずれも数百年の老樹である。浅草観音堂《あさくさかんのんどう》のほとりにも名高い銀杏の樹は二株《ふたかぶ》もある。小石川植物園内の大銀杏は維新後|危《あやう》く伐《き》り倒されようとした斧《おの》の跡が残っているために今ではかえって老樹を愛重《あいちょう》する人の多く知る処となっている。東京市中にはもしそれほどの故事来歴を有せざる銀杏の大木を探り歩いたならまだなかなか数多いことであろう。小石川|水道端《すいどうばた》なる往来《おうらい》の真中に立っている第六天《だいろくてん》の祠《ほこら》の側《そば》、また柳原通《やなぎわらどおり》の汚《きたな》い古着屋《ふるぎや》の屋根の上にも大きな銀杏が立っている。神田|小川町《おがわまち》の通にも私が一橋《ひとつばし》の中学校へ通う頃には大きな銀杏が煙草屋《たばこや》の屋根を貫《つらぬ》いて電信柱よりも高く聳《そび》えていた。麹町《こうじまち》の番町辺《ばんちょうへん》牛込御徒町《うしごめおかちまち》辺を通れば昔は旗本の屋敷らしい邸内の其処此処《そこここ》に銀杏の大樹の立っているのを見る。
銀杏は黄葉《こう
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