岸一覧』に川筋の風景をのみ描き出した北斎《ほくさい》も、更に足曳《あしびき》の山の手のために、『山復山《やままたやま》』三巻を描いたではないか。
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第十 坂
前回記する処の崖といささか重複《ちょうふく》する嫌いがあるが、市中《しちゅう》の坂について少しく述べたい。坂は即ち平地《へいち》に生じた波瀾である。平坦なる大通《おおどおり》は歩いて滑らず躓《つまず》かず、車を走らせて安全無事、荷物を運ばせて賃銀安しといえども、無聊《ぶりょう》に苦しむ閑人《かんじん》の散歩には余りに単調に過《すぎ》る。けだし東京市中における眺望の一直線をなす美観は、橋あり舟ある運河の岸においてのみこれを看得《みう》るが、銀座日本橋の大通の如き平坦なる街路の眺望に至っては、われら不幸にしていまだ泰西《たいせい》の都市において経験したような感興を催さない。西洋の都市においても私は紐育《ニューヨーク》の平坦なる Fifth Avenue よりコロンビヤの高台に上る石級《せききゅう》を好み、巴里《パリー》の大通《ブールヴァール》よりも遥《はるか》にモンマルトルの高台を愛した。里昂《リオン》に
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