然るに如何《いか》にして大久保の辺《ほとり》に、かかる殆んど自然そのままの原野が残っているのであるか。不思議な事にはこれが実に俗中の俗なる陸軍の賜《たまもの》である。戸山の原は陸軍の用地である。その一部分は戸山学校の射的場《しゃてきじょう》で、一部分は練兵場として用いられている。しかしその大部分は殆んど不用の地であるかの如く、市民もしくは村民の蹂躙《じゅうりん》するに任してある。騎馬の兵士が大久保|柏木《かしわぎ》の小路《こみち》を隊をなして駆《は》せ廻るのは、甚《はなは》だ五月蠅《うるさ》いものである。否《いな》五月蠅いではない癪《しゃく》にさわる。天下の公道をわがもの顔に横領して、意気|頗《すこぶ》る昂《あが》る如き風《ふう》あるは、われら平民の甚だ不快とする処である。しかしこの不快を与うるその大機関は、また古《いにしえ》の武蔵野をこの戸山の原に、余らのために保存してくれるものである。思えば世の中は不思議に相贖《あいあがな》うものである。一利一害、今さらながら応報の説が殊に深く感ぜられる。
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 秋骨君が言う処|大《おおい》にわが意を得たものである。こは直《た
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