詩アリ。桓寛《かんかん》ガ『塩鉄論《えんてつろん》』ニ曰ク鄙儒《ひじゅ》ハ都士《とし》ニ如《し》カズト。信ズベシ矣。」とあり初学者よくよく読み味ひて前条おのれが言ふ所と照し見よかし。
一 わが日本の文化は今も昔も先進大国の摸倣によりて成れるものなり江戸時代の師範は支那なり明治大正の世の師とする所は西洋なり。然《さ》れば漢文欧文そのいづれかを知らざれば世に立《たち》がたし。両方とも出来れば虎に翼《つばさ》あるが如し。国文はさして要なけれどもしこれを知らんとせばやはり漢文|一通《ひととおり》の知識必要なり。本店の内幕《うちまく》を知れば支店の事はすぐわかる道理。大正現代の文学はその源《みなもと》一から十まで悉《ことごと》く西洋近世の文学にあり。
一 東京市中自動車の往復頻繁となりて街路を歩むにかへつて高足駄《たかあしだ》の必要を生じたり。古きものなほ捨つべきの時にあらず。日本現代の西洋摸倣も日本語の使用を法律にて禁止なし、これに代《か》ふるに欧洲語を以てする位の意気込とならぬ限りこの国の小説家漢文を無視しては損なり。漢字節減なぞ称《とな》ふる人あれどそれは社会一般の人に対して言ふ事にて小説
前へ
次へ
全21ページ中9ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
永井 荷風 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング