の名は金《きん》に始まる事|陶九成《とうきゅうせい》が『輟耕録《てっこうろく》』に「唐有伝奇[#「唐有伝奇」に傍点]。宋有戯曲渾詞説[#「宋有戯曲渾詞説」に傍点]。金有院本雑劇其実一也[#「金有院本雑劇其実一也」に傍点]。」〔唐《とう》に伝奇《でんき》有《あ》り。宋《そう》に戯曲、渾《こん》、詞説《しせつ》有り。金《きん》に院本《いんぽん》、雑劇《ざつげき》有り、其《そ》の実《じつ》は一なり。〕とあるによりて知らる。これ鷲津毅堂《わしづきどう》先生が『親燈余影《しんとうよえい》』に出でたり。
一 鴎外先生若き頃バイロンの詩を訳せらるるに何の苦もなく漢字を以て韻《いん》を押し平灰《ひょうそく》まで合せられたり。一芸に秀《ひい》づるものは必ず百芸に通ず。これ一事《いちじ》を究《きわ》め貫《つらぬ》かんと欲すればおのづから関聯《かんれん》して他の事に及ぶが故なり。細井広沢《ほそいこうたく》は書家なれど講談で人の知つたる堀部安兵衛《ほりべやすべえ》とは同門の剣客《けんかく》にて絵も上手なり。当世の文士小説かくと六号活字の文壇消息に憎まれ口きくだけが能《のう》とはあまりに潰《つぶ》しがきかな過ぎ
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