かし後年芝居を見るようになってから、講談筆記で覚えた話の筋道は非常に役に立った。
 東京の家からは英語の教科書に使われていたラムの『沙翁《さおう》物語』、アービングの『スケッチブック』とを送り届けてくれたので、折々字引と首引《くびッぴき》をしたこともないではなかった。
 わたくしは今日の中学校では英語を教えるのに如何なる書物を用いているか全く不案内である。中学校で英語を教えることは有害無益だという説もだんだん盛になって来るようである。思出すままに、わたくしたちが三、四十年前中学校でよんだ英文の書目を挙げて見るのもまた一興であろう。その頃、英語は高等小学校の三、四年頃から課目に加えられていた。教科書は米国の『ナショナル・リーダー』であった。中学校に進んで、一、二年の間はその頃新に文部省で編纂した英語|読本《とくほん》が用いられていたが書名は今覚えていない。この読本は英国人の教師が生徒の発音を正しくするために用いたので、訳読には日本人の教師が別の書物を用いた。その中で記憶に残っているものは、マコーレーのクライブの伝。パアレーの『万国史』。フランクリンの『自叙伝』。ゴールドスミスの『ウェーク
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