一夕
永井荷風
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【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)四方山《よもやま》
|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)時|一人《いちにん》の
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(数字は、JIS X 0213の面区点番号、または底本のページと行数)
(例)※[#「孚」の「子」に代えて「臼」、212−11]
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[#ここから改行天付き、折り返して1字下げ]
一 小説家二、三人打寄りて四方山《よもやま》の話したりし時|一人《いちにん》のいひけるはおよそ芸術を業とするものの中《うち》にて我国当世の小説家ほど気の毒なるはなし。それもなまじ西洋文学なぞうかがひて新しきを売物にせしものこそ哀れは露のひぬ間《ま》の朝顔、路ばたの槿《むくげ》の花にもまさりたれ。もし画家たりとせんか梅花《ばいか》を描きて一度《ひとたび》名を得んには終生唯梅花をのみ描くも更に飽かるる虞《おそれ》なし。年老いて筆力つかるれば看るものかへつて俗を脱したりとなし声価いよいよ昂《あが》るべし。俳優には市川家十八番の如きお株といふものあり。演ずる事たびたびなれば、観客
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